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 2章で挫折。そこまではなんとか読んだ。

 最初に言っておきますが、これは相性の悪いものを読んだこっちが悪い、というパターンです。客観的にみればラブコメとしてはかなりうまいほうに入ると思います。

 ラブコメって要は人間関係のお話なので、いわゆる「心理の流れ」みたいなのがおかしいとてきめんに読めないものになってしまうのですけど、そういう不自然さがほぼありません。主人公の雰囲気も一定していますし、ヒロインも魅力がある。書籍化も納得です。

 ただし。

 俺は徹底的に無理でした。

 

 無理な理由のひとつめは、主人公が好かれることに明確な理由がない、ということです。俺は隠れイケメン設定にはさほどアレルギーがなくて、たとえば天使様なんかそのへんの理由で無理って人けっこう周囲にいたんですけど、まあ気にならない。この作品もどちらかというと隠れイケメン系の設定なんですけど、それは好かれる直接の理由にはなってません。比較の対象として便利なので天使様を引き合いに出して続けますが、あっちの作品もやはりイケメンであることはあまり強い理由にはなってないんですが、二人の距離が近づくまでの描写が芸術的なまでにうまいんですよね。必然性といってもいい。この作品にはその必然性がない。

 もちろん、なくていいんです。これは読者として気にするかしないかってだけの話なので。俺は気になるタイプというだけです。むしろ必然性なんてものを気にしてしまうとお話の展開速度が落ちる。

 

 そこで無理な理由のふたつめです。家父長制感。これはもうね、アルレギーはっきりあります。アレルギーがあるからこそ鋭敏なんです。まず、ギャルが見かけとは違って純真なのはともかくとして、実は家庭的でした設定がもう無理。これも個人の趣味の問題ではあるんですが、ギャル、スクールカーストトップ、実は処女(俺が読んだ段階でそれが明かされているわけではない)、家庭的、べた惚れ。このへんの要素を並べられるとですね、このヒロインは役割なんじゃないか、欲望の器なんじゃないかって気がしてくる。

 くどいようですが、それが悪いと言っているわけではありません。俺はラブコメ読みとしては相当にひねくれてるほうだという自覚があって、ウェブ発のラブコメってほぼ合わないってのもありますし。

 ただねー、この主人公、お話が進むにつれ、カースト底辺だったはずが、惚れられてるとわかってくるにつれ、明確に「俺の女」扱いしはじめるんですよね。支配下にあるかわいい女だっていう認識。さらにヒロインが「家庭に入る」なんてこと言い出す。

 もちろんそういう関係性があって悪いという話ではない。しかしこれも俺のアレルギーなんですが、昭和的な専業主婦核家族的なものにものすごいアレルギーあるんですよ俺。

 なろうでおっさん主人公の作品あるじゃないですか。追放でも引退でもなんでもいいんですけど、そうやってむなしく暮らしてたらかつての部下や仲間が慕ってきたり、隠れた実力が発揮されたりするやつ。だいたいスローライフとセットですが。で、この手の作品、だいたい元部下だったり主人公に憧れてたりする年下の若い女性があらわれて、良妻賢母及び恋人有能な部下すべてを兼務してたりする。もう、これが無理。たまらなく無理。まあこれだけ作品数のある世界ですんで、かならずしもすべてが同じパターンになるとは申しませんけど、そこにやっぱり家父長制感が見えるんですよね。こうなるともう無理。

 

 というわけで、この作品は徹底的に合いませんでした。

 ちなみに同時並行で読んでたウェブ発で書籍化したやつが、やっぱり読む人が読めばおもしろいのに俺には徹底的に合わないやつだったので、なんか、当たりがよくない。