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 先日購入した本です。

 これはまあ……読むのに苦労しました……。

 読みづらい場合っていくつかパターンがあるんですが、主に作品のほうに原因がある場合と、読み手であるこちらに原因がある場合です。

 作品のほうに問題がある場合は、まあ単純にレベル的にアレだった場合です。ウェブ小説なんかはどうしてもそういうのが混入してますし、商業作品でもまあぶっちゃけテンプレに人間の皮をかぶせたような作品ってのは存在します。まあその場合、なに書いても文句にしかならないので感想そのものを書きません。

 で、この作品の場合、あきらかに後者で、つまり相性がよくなかったです。小説そのものとしては、主人公の心理を丁寧に追う感じです。ヒロインはバカ素直なんで、詮索のしようもない、という話もあります。人の心が読めるという主人公、その状況から必然的に導き出される主人公像。違和感はほぼないです。どうかすると踏み外しが多そうな題材なんですけど、読んでる限り、そういう部分はいっさいなかったです。

 で、ヒロインは「まったく声に出してしゃべらない」という設定で、じゃあどうやって意思表示をするかというと、文字でします。おっさんとしてはその設定見た瞬間「澪! 澪じゃないか! 20年ぶりだなあ!」と思ったわけですけど、ヒロインが使用するのはスケッチブックではなくタブレットで「ああ……20年ぶりだなあ……」としみじみとしたということです。

 

 合わなかった最大の点は、主人公がリア充であることです。ほら、作品にはなんにも責任がない。俺は空気が読めないことでは定評のある人間で、ネット回線越しですら発達障害の気配を察知されるほどです。なので「心が読める」ことから必然的に導き出される気配り上手の世界観はなにもわかりません。

 設定上、一種の万能主人公になりうるわけなんですが、いっそのことそういう装置として機能しているなら、エロゲ類似のものとして割り切れるんですけど、この作品の場合、主人公の内面が大きくクローズアップされている。そこが合いませんでした。

 もひとつ、ヒロインが素直すぎるのも厳しかった。単純にいうと「かわいい」と認識できませんでした。くどいようですが、ヒロインの造形が悪いとかそういう話ではありません。俺の趣味として、内面がきれいすぎるヒロインは厳しいというだけです。落ち着かないんですよね。素直でいい子のヒロイン出てくると腹黒設定加えないと逃げ出したくなる。

 ただこれ読んでて思ったんですけど、ラブコメで、特に複数ヒロインの場合、どうしてもメインヒロインの印象が薄くなりがちってよくある現象だなあと。この作品の場合「しゃべらない」という圧倒的なフックがあるのでまた違うんですが、メインよりサブのヒロインのほうが人気が出てしまう問題、けっこうどこにでも転がってる気がする。俺の場合、ネトゲ嫁がそれで、メインヒロインの亜子は充分に好きなタイプで、しかもアニメ化したときには声が日高里菜っていうエビゾリ絶頂状態だったんですが、それにもかかわらず瀬川のほうがずっと好きだったんですよね。どう考えてもメイン張れる個性は与えられてないのに。

 というわけで、相性がよくなかったよ、という話でした。